TOP インタビュー 『ウチは“条件”がよくないから』と、諦めていませんか? 〜元教師が伝える、中小建設業が高校生の心を掴む「本当の戦い方」〜

『ウチは“条件”がよくないから』と、諦めていませんか? 〜元教師が伝える、中小建設業が高校生の心を掴む「本当の戦い方」〜

2025年11月25日更新

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「ウチみたいな中小企業は、大手には勝てない」 

「給料も休日も見劣りしますから」

高卒採用のシーズンが近づくと、こんな“本音”がこぼれていませんか?

ですが、もしその「諦め」が、“戦う場所”を間違えているだけだとしたら?

「多くの中小企業さんが、勝てない土俵(=条件)で戦おうとして、勝手に諦めてしまっているんです。本当にもったいないです」

そう語るのは、6年間の高校教師を経て、現在は採用の最前線に立つコンサルタント、細野舞夏(ほその まいか)さんです。

生徒たちの“本音”を知り尽くす彼女は、「給料」や「休日」といった“大人の常識”とは全く別の場所に、高校生の心を掴む「武器」が眠っていると指摘します。

この記事では、多くの経営者が抱える「4つの先入観」を、細野さんの言葉と共に一つひとつ見直していきます。

講師プロフィール

細野 舞夏(ほその まいか) さん

群馬県出身。画一的な指導に違和感を持ち、高校を中退。その後、都内の高校に編入し卒業。 「生徒の多様性に応える、一風変わった先生が必要だ」との思いから教員を志し、大学卒業後、静岡県の高校で6年間教鞭を執る。

生徒の意思よりも、失敗のない“安全”な進路選択を優先する指導方針に限界を感じて退職。転職の仕方がわからなかった自身の経験も踏まえ、現在は株式会社ジンジブにて、元教師の視点を活かし「生徒の本音」と「企業の課題」を繋ぐコンサルタントとして活躍。

先入観①:「条件(給料・休日・福利厚生)で、大手に勝てない」

まず、最も多く聞かれるこの「諦め」の声。 確かに、求人票の条件だけで戦おうとすれば、分が悪いのは事実です。都内では何千枚という求人票が届く中で、条件を見比べられると不利になる部分もあります。

しかし細野さんは、「戦うべき場所はそこではありません」と続けます。

「そもそも、今の高卒採用は、基本給も休日も“横並び”になっているんです。 高卒初任給は大体19万円前後、年間休日も105日以上が当たり前。昔のように『あっちが5万高い』といった大きな差で会社を選ぶ時代ではなくなりました。

その上で、ちょっと想像してみてほしいんです。 18歳の子が、本気で『確定拠出型年金』や『介護休暇』の充実度で、会社を選ぶでしょうか?

“横並び”の条件で差がつかないからこそ、高校生の心に響くのは、『社長の熱意』や『仕事のやりがい』といった、条件以外の部分なんです。」

細野さんは、実際に『給料が平均以下で、年間休日も100日ちょっと』という建設会社が、高卒採用に成功した事例を挙げています。

その会社がなぜ選ばれたのか。細野さんはこう分析します。

『本人たちに聞いたわけではないので絶対とは言えませんが、考えられるのは「社長の思い」や「人の手じゃなきゃできない仕事のやりがい」。

大人が気にする“立派な条件”よりも、そういった“熱意”の部分が、高校生の心を掴んだのだと思います』」

先入観②:「“アットホーム”な雰囲気は、今どき敬遠される」

「社長との距離が近すぎる」「家族経営的だ」。 こういった“アットホーム”な風土も、「今どきの若い子には敬遠されるのでは…」という不安がよぎります。

ですが、これも「大人と高校生の認識のギャップ」だと、細野さんは指摘します。

「一時期、アットホーム=ブラックというイメージが広まっていましたが、最近の高校生にはそんなイメージはないです。

高校生に『アットホームってどんなイメージ?』と聞いても、『冬のこたつでポカポカしてる感じ』くらいの、純粋に温かいイメージしか持っていませんよ(笑)。

例えば、入社後に社長が新人の顔と名前をしっかり覚えて、頑張った日に『よくやったな』とアイスを1本買ってあげる。

社長が『お父さん』、奥さんが『お母さん』のような温かい雰囲気。 それは、コロナ禍で希薄な人間関係を経験してきた彼らが、安心して働ける“居場所”の証明になります。

中小企業さんが『弱み』だと思っていた“家族的な近さ”は、高校生にとっては立派な「魅力」になるんです」

先入観③:「今の子はドライ。俺たちの“熱意”は響かない」

「そもそも、今の子はドライだ。飲みにも来ないし、付き合いが悪い」。 そんな嘆きも、高卒採用に踏み出せない一因かもしれません。

この「“今どきの子”論」に対しても、細野さんは「それは大きな誤解です」と首を振ります。

「彼らはドライなのではなく、“熱く”なる経験に、慣れていないだけなんです。

思い出してください。今の高校生たちは、学生生活の多くをコロナ禍で過ごしました。『集まっちゃいけない』『喋っちゃいけない』と、みんなで一つの目標に向かって熱くなる経験を、ごっそり奪われてきた世代なんです。

経験がないから、どう振る舞っていいか分からない。 でも、根は素直です。『やろうぜ!』と火を点ければ『ウェイ!』と盛り上がります。大人がその『働きかけ方』を知らないだけなんですよ」

先入観④:「どうせ“親ブロック”で、反対されて終わる」

そして、最後の壁として立ちはだかるのが「親御さんの反対」、通称“親ブロック”です。 「あんな小さな会社、やめておきなさい」と言われたら、高校生はぐらついてしまいます。

この見えない強敵に対しても、「今すぐできる対策がある」と細野さんはアドバイスします。

「親御さんが不安なのは、結局『その会社を知らないから』に尽きます。

まず、最低限の『ホームページを持つ』こと。これだけで安心材料になります。

次に、『地元のお祭りに協賛している』『小学生に会社見学をさせている』といった、地域に開かれた活動の実績を作ること。

そして最強の一手は、『親御さんも一緒に職場見学に来てください』と、巻き込んでしまうことです。

お子さんが働くかもしれない場所を自分の目で見て、社長の顔と言葉に触れれば、不安は安心に変わります」

自社の『武器』を見つけるために

このように、多くの経営者が抱える「諦め」は、高校生たちの“本音”を知ることで、「思い込み」だったことに気づかされます。 「条件が悪い」「知名度がない」「今の子はドライだ」…。 これらは、戦う場所さえ間違えなければ、決して“負ける理由”にはならないのです。

細野さんの言葉を借りれば、高卒採用で大切なのは、以下の3点です。

1.自社に眠る「本当の魅力」を、どうやって見つけるか。

2.それを「高校生に響く言葉」で、どう伝えるか。

3.そして、彼らの心への「火の付け方」を、どう知るか。

この記事では、高卒採用における「本当の戦い方」のヒントをお伝えしてきました。

大切なのは「今の条件」を嘆くことではなく、「自社の魅力をどう届けるか」という“視点の転換”です。

もし、この記事を通じて「ウチにもできるかもしれない」という可能性を感じていただき、「もっと具体的なノウハウを知りたい」「ウチの場合はどうすれば?」と、さらに一歩踏み込んで考えたいと思われたなら。

ぜひ、次のステップとしてこちらのセミナーをご活用ください。

(株)助太刀では、この記事でご紹介した細野舞夏さんをお招きし、(株)ジンジブと共同で、「高卒採用の本当の戦い方」をより深く、具体的に学ぶための実践的な場をご用意しました。

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